【開催レポート】コロナ禍にビジネスセミナーをスタートした成功例から学ぶ ビジネスセミナーの創り方とは?

カンファレンスファクトリーでは、毎月様々なゲストをお迎えし、企業イベントやセミナー・カンファレンスに関する動向や事例についてオンラインセミナーを開催しています。

今回は、株式会社シアターワークショップの施設運営部 執行役員 丸山 健史氏をゲストにお迎えし、弊社代表の前野と対談形式で開催。シアターワークショップは、コロナ禍の2020年8月にビジネスセミナーをスタートされました。有料セミナーにも関わらず、毎回200名近くご参加頂くオンラインセミナーを定期的に展開されています。

そんなシアターワークショップの丸山氏に、ビジネスセミナーについてお話頂きました。


サマリー

■ セミナーを開催する際に考えていたこと
・「有益な情報をお届けしたい」「利益は劇場業界に還元する」と言う理由で、有料セミナーでの開催にこだわった
・課金システム、決済方法、ログが確認できること

■ セミナーをやる意義
・情報を発信しているところに情報は集まってくる
(中には営業につながる情報もあり、下手な営業をするよりも、セミナーやるほうがよっぽど価値がある)


なぜコロナ禍の昨年に、セミナーをスタートしようと思ったのでしょうか?

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丸山(敬称略): 次の世代の事業や劇場を検討・提案する中で、劇場セミナーをやっていきたいという構想が2020年1月頃から考えてはいました。しかし、じゃあいざ実施しようと思った頃には、コロナウイルスの感染拡大の影響で、とてもセミナーを開催できる状況ではなくなってしまった。が、これは待っていてもいられないと思い、オンラインでの開催を検討し始めました。

と言うのも、緊急事態宣言で在宅ワークを強いられた際に、前野さんのオンラインセミナーに出会って、実はこれ毎週観ていました。それからたまたま前野さんとお会いする機会が増え、色々ご相談させていただき、劇場セミナーをスタートさせたってのが大きなきっかけです。

新しいことを考えるには、社内の意見だけでは限界もある。社外のご意見も伺いながら『次世代型劇場』を考えていく必要がある。そんな、社外のご意見も伺いながら創り上げていく、という趣旨でこの劇場セミナーを立ち上げました。コロナウイルス感染拡大の結果、その開催方法がたまたまオンラインになった、という流れでしたね。

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シリーズ化して開催されている

 

オンラインセミナーを開催するにあたってどんなことに考慮されましたか?

丸山: もともと有料のセミナーにはしたいと思っていました。それは、決して儲けたいから、ではなく、有益な情報を出したいと考えていたからです。また、セミナーの利益については、劇場に還元もしたかったためです。開催方法としてYouTube Liveなどの選択肢もありましたが、当時は課金ツールがあまりありませんでした。

色々調べた結果、今回のサービス(AIR STAGE)は、課金のシステムとともに映像を配信できるということで非常に便利だなと思いました。決済方法もさまざまで、ワンストップで出来るのはかなりポイントでした。セミナーをシリーズ化したかったことに加え、反省を活かすという意味でも録画できることは便利である等、外部的要素にも役立っています。

オンラインをやってみて良かったなと思うことは、視聴者が増えたことですね。いつも会場で使っている会場(渋谷キャスト)は、フルでも70人程の収容で、さらに今はハーフキャパシティになっていて全然人を入れられないという状況なんです。しかし、オンライン開催になったことで、実は最初のセミナーで約400名の視聴があり、ログを見ると国内外で視聴して頂けていたことも分かりました。海外からの視聴も確認できるので、驚きましたね。

前野: オンラインのメリットである『時間と空間を超える』という意味では、リアル参加では考えられなかったことですよね。

丸山: 弊社代表とも話しましたが、小劇場でも300人埋めるのは大変なので、正直かなり衝撃でした。

 

実際に手掛けてみて、どんなところで変化や効果を感じましたか?

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丸山: 社内外の変化は明確にあって、情報を発信しているところに情報が集まってくると感じました。かつて、毎週前野さんのセミナーを観ていたのもそうです。情報発信していると情報がこちらに戻ってくるし、ある種の営業活動にも繋がっていたりとかで、お問い合わせ相談がきたりもします。

前野: 宣伝メールは嫌だけど、セミナー案内だと嫌がられないんですよね。下手な営業をするよりも、セミナーやるほうがよっぽど価値があると思います。

丸山: 僕たちは有料でやらせてもらっているからこそ、下手なことは言えないという緊張感はあります。また、セミナー後に『もっと詳しく聞きたい』と話が広がっていくこともあります。あとはセミナー開催にかこつけて、自分の聞きたかったことをゲストに聞けるのも醍醐味だと思います。

前野: 話す方も準備してきて話すので、自分のことを整理する良い時間になったと言って頂けますよね。

 

リアルとオンラインを同時開催するときの苦労している点を教えてください

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丸山: 会場ばかり盛り上がると、オンラインが取り残されていないかなと思ってしまいます。そこで気を付けていることのひとつは、タイムキープです。オンラインの良さは何かしながら聴けることですけど、集中して聞くなら60分くらいが丁度よく、90分がマックスだと思います。でも、リアルは盛り上がってしまって尺が漏れることがあるので、熱量の差が出てきてしまいますよね。リアルは日常的で、オンラインは放送に近いのかなと思うので、尺の計算が必要かなと思います。

前野: リアルタイムのチャット対応など、参加者の意識をすることも大切ですよね。リアルは90~120分やりたいけど、両方成立させるのは難しいそのまま配信じゃなくて、ダイジェストにして配信するとかを考えないといかないといけないのが課題ですね。

丸山: 本当はリアルでも気を付けるべき問題ではあるんですが、オンライン開催の場合、著作権にも本当に気を遣いますね。特に音楽。また、画面表示のされ方もリアルとオンラインでは異なるのでスライドの作り方も違ってくる・・・などと、まだまだ試行錯誤中です。

もしかすると、今後は劇場の作り方にも影響するかもしれません。オンラインと言うのは、開催場所はどこでもいい訳ですから、差別化の要因にはならないですよね。またいずれハイブリットにもなってくるだろうし、劇場は最低限のインフラではあるべきだと考えています。カメラとお客さんの共存が今後ますます必要になってくるので、配置等も考えていかないといけないです。

前野: 記者発表のような形が必要なのかもしれませんね。カメラなどの技術に期待をしながらも、我々も技術を追いかけていかなければいけないですよね。

 

これからのイベントや会場がどのように変化していくと思いますか?

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丸山: 今はオンラインイベントが多いですが、いつかリアルは戻ってくると思うんです。

『ユニークべニュー』という発想が特にビジネスイベントでは出てきていると感じていますが、例えば、コロナウイルスを経てオープンエアーな空間をどううまく利用できるか、とかも考えます。内外一体となる屋内外のハイブリットイベントもやってみたりました。コロナを機におもしろい空間にできるかなと考えた結果、2020年立川ステージガーデンというホールもオープンさせました。

前野: 建物の中だけじゃなくて街づくりの中で、イベントをどう街の中にインストールするかという発想が必要だと思っていす。タウンジャックも出てくると思いますし、配信するときに使っているノウハウがジャックするときにも使えそうですよね。

昔はできなかったことも、オンラインが進んだことでやりやすくなっていますし、時差はあっても画質も良くなっていますよね。街づくりにオンラインセミナーの手法が活用されていくことも期待しています。ちょっとした場所、道さえも『ユニークベニュー』に成り得ますよね。

丸山: 我々が用意するものと言っても、ネット回線を出せて十分な電源があれば、あまり用意するものはないのかもしれません。あとは共存できるようなイベント設計できているかが大事だと思います。他には、住民の理解や、イベントをやる上で必要のない法制度や条例を変えていかなきゃいけないと感じています。

そのためには横のつながりを増やしていきたいんです。現場で困っているけど相談できないことも結構ありましたし。時代に合ってない法律がたくさんあることが、ユニークベニューが発達しない理由かなと思います。

リアル・オンライン(自宅・移動中など)で楽しむ中で、それぞれが楽しみやすいイベントの自由度を作ってあげるのも大事だと思うんです。

 

イベント業界の未来について

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丸山: セミナーや発表会は、このままのオンラインとハイブリットの流れでいけるかなと思うんですけど、展示会はどうなるのかなと、個人的には疑問を抱いてます。アパレル等においては、展示会で見ずに個別営業だけで物を購入する流れになるのかっていうところですよね。

前野: 高級品こそリアルは絶対必要と思っていることは多いかなと。例えば、時計・車は、見ずに買うってことはないですよね。だから、ブランドは割と早くリアルが戻ってくるでしょう。また、リアルがなくなるとも思いたくないです。

五感に訴えることは絶対オンラインに置き換わらないし、熱量の違いもありますよね。いずれ、リアルに来る人と言うのは熱量高い人しか来なくなるだろうから、より盛り上がる可能性も考えられます。

丸山: 熱量に関してで述べると、音楽はオンラインでも見られるんですが、演劇はいまだにオンラインではつまらない。理由は、お客さんも作品の一部で空間を創っているからだと思います。でもそれがリアルの本来の良さで、ひとつの作品を完成させるにはお客さんがいないと舞台芸術として演劇は完成しないと思いまして。

ビジネスイベントも登壇者をみると、リアルとカメラ前で話すのとでは違ってきますから、お客さんがいる・いないで違ってくる。熱量って大事ですよね。

前野: このままずっとこの状況が続くとは思えないんですけど、戻ってきたときの戻し方とかは突き詰めて考えていきたいところですよね。

 

■最後に今後について一言お願いします

丸山: 同業の方も含め、2020年は本当に辛い1年でしたが、『コロナウイルスのおかげ』と思って、みんなで手を取り合って新しいことに挑んでいくことが大事かなと思います。回復力を持って新しいリアルイベントが始まるんじゃないかなと期待しています。

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丸山さん、貴重なお話をありがとうございました!!